どうして出来るだけ やさしくしなかったのだろう
後悔先に立たずといいます。確かにそうなのだと
つくづく思います。それを何度も繰り返すのだから
ほとほと自分という奴は、と情けなくなります。
これが恋愛に関してとなれば
その後の人生さえ左右しかねません。
かつて、ザ・ピーナッツは♪『大阪の女』という
名曲の中で次のように歌っています〈歌詞抜粋〉。
♪ もっと尽くせば よかったわ
我がまま言って 困らせず
泣いて別れる 人ならば ♪
〈歌詞中略〉
きっと良いこと おきるから
京都あたりへ 行きたいわ
酔ったふりして 名を呼べば
急にあなたが 来るようで
離れられない 大阪を
と…。この歌は私のカラオケ指定曲でもあり、
シンミリ感ひとしお、ジ~ン、といったところか…。
誰でも常に、ありとあらゆる事柄で
後悔に後悔を重ねるわけで、
今度こそは悔し涙に暮れないようにと
気持ちを新たにするものの、いつの間にやら…。
♪ どうしてどうして
出来るだけ やさしくしなかったのだろう
二度と会えなくなるなら ♪
と悲痛な叫びで歌われる松任谷由実の
♪『リフレインが叫んでる』
主人公はスケジュールの合間に
時間を見つけては、かつて彼とドライブした
想い出の場所に車を走らせる。
ひとつ前のカーブまで引き返してみよう…
あの駐車場に彼も来ている気がする…。
はかない夢、胸張り裂ける願望。
ありもしない幻だと知っている筈なのに。
今日も夕映えになってしまった。
諦めて帰らなければならない時間だと。
彼女と同じ思いが未だ、彼の心の片隅に
残っているのなら、彼は必ず
私の面影を探してここへ来る。
何度となく車で乗り付けようと
彼と出くわすことはない。
もういい加減に認めなければ。
彼は自分の面影など
追いかけてはいない。
リフレインは叫んでなどいない。
駐車場に彼の姿もない。
車に乗り込んだ時に
彼女が見たものは幻影。
聴いたものは幻聴。
全ては彼女の心の中で起きた
静寂の後悔と未練。それが深くて重い時、
人はそれを絶望と呼ぶ。
『大阪の女』の主人公もまた、
急に彼が現れる幻影に縛られ
自分の幸せに踏み出せずにいる。
時の経過。
誰もが後悔に、未練に、
折り合いをつけなければならない。
いやだとそれを振り切れば
後悔と未練に溺れてしまう。
振り切ることに疲れ、やがて
その時を迎える。その時が来てしまう。
化石に等しい愛を記憶の彼方に葬る時が。
忘れることが出来ないのなら
それを封印してしまうほかない。
そうしなければ前へ進めないから。
進めなければ心の崩壊が始まる。
クールファイブの前川清は、楽曲『神戸』
の中で、自虐的で確信的な歌詞を吐き捨てる。
♪ 誰かうまい嘘のつける 相手探すのよ ♪
誰かと一緒でなければ生きてはいけない弱さ。
独りでは到底無理だ。
でも二度とあの苦痛を味わいたくはない。
最初から本気になれない相手となら、
偽りの恋愛なら、破局後もきっと大丈夫だと…。
追い詰められた果ての恋愛虚飾。
果たして、罪でしょうか。
♪ 声上げて笑う癖も すぐに涙ぐむ癖も
みんな
あなたと知り合い 覚えたこと
気が向けば 電話して
グチでも こぼして ♪
別離後も完全に相手との音信を絶たない。
面会すらあるという女心。
これもまた自己崩壊を防ぐひとつの得策かもね…。
むなしさつのる自己救出法かも。でも、
少しの間なら
立ち直れる可能性を探る、
時間稼ぎにはなるかもしれない、かな?。
別れた後、なおも彼に
甘えかからせてあげたいと思っている。
愛し方を変えることは、難しい。
南沙織は、当初シングルレコードB面だった
この♪『気が向けば電話して』を
何とかA面にしたくて仕方なかったそう。
この曲のスタンスこそが
彼女そのものなのかもしれませんね。
悲しみに出会うたび あの人を思い出す
こんな時そばに居て 肩を抱いて欲しいと
中村雅俊歌うところの ♪『ふれあい』。
この主人公は、次の相手、新しい恋人など
まるで想定していないかのようだ。
想定していたなら、
過去にとらわれていたいスタンスなど
持つはずないだろうし。
別れた後、一歩も進み出せず、
まだ甘え続けている。
後悔や未練の正体って、一体何でしょう。
相手の望む通りの人間になる、と相手に誓う。
あるいは、悔い改めるべきところは改めると
誓う…。つまり、愛の力で、
愛する人を取り戻したいと切なる願いから
到底変えがたい自分という人間を
変えることが出来る、というのでしょうか。
愛する人を失った代償がそれ?。
恋愛って、もしかしたら
命がけでするものなの?。
こッ、怖いッ!。