ホームランでなければならない
万年補欠のジェリーに奇跡の代打が回って来た。
9回裏、ジェリーのチームは1対0で負けている。
1塁走者ひとり。つまり、ジェリーがホームランをかっ飛ばせば
逆転サヨナラとなる。
彼は遂にロッカーから秘密兵器の特注バットを持ち出した。
通常のバットに比べるとイビツではあるが、特に問題はない。
大観衆が固唾(かたず)をのむ中、ピッチャーが怪物フォークボールを投げた。
ジェリーの脳裏に一瞬、赤子を抱いて自分の帰りを待っている
妻シェリーの姿が浮かぶ。
この打席で引退か、まだその先があるのか。
振りぬいた瞬間、彼の視界は真っ白に。全ての音も消えた。
次の瞬間、大歓声の中、ジェリーは確かに見た。
彼の打った打球が、バックスクリーン最上段に消えてゆくのを。