痛恨のメモリアル・ボール
彼は最後の瞬間を迎えようとしていた。
この球もさっきと同じように
打ち返せなければ
これでアイツの優勝が決まる。
彼は深呼吸し、小さく呟いた。
「今回はこれまでか…。だが、
また来年、この地を踏むと誓うぜ…」
これまで身につけてきた
全てのテクニックを集約し、
彼はラケットを振りぬく!。
ポフ!。
その瞬間、観客はいっせいに身を乗り出した。
試合の最後の最後、一呼吸早く敗北を認めた彼は
早々に今回の準優勝メモリアルボールを手に入れる結果に…。
彼は、今年をあきらめて来年改めて勝負なんだと誓った。
誓う。
誓、という字は 折る、を言う、と書く。
彼は、心が折れたと言った。
だから負けたのだ。